イラン紛争が泥沼化する構造的要因を解説
ベネズエラ情勢において、国のトップを捕縛することで電撃的な終結を見た軍事作戦。しかし、イランにおいては、ハメネイ師をはじめとする指導部や主要幹部が次々と排除されたにもかかわらず、戦火がやむ気配はない。なぜイランでは、軍事的な圧力が即座に終結へと結びつかないのか。その背景には、表向きの政府と実権を握る革命防衛隊の断絶、そして核開発を巡る複雑な事情がある。

ハメネイの後継者であるモジダバ師
権力の二重構造:交渉の場に不在の「真の決定者」
現在、ペゼシュキアン大統領、アラグチ外相、ガリバフ議長らが米国との和平交渉を主導している。しかし、彼ら和平派には、イランの軍事行動を決定し、実権を握る革命防衛隊を制御する権限がない。
外交の窓口として国際社会に顔を見せる彼らだが、実際の戦闘継続の判断は革命防衛隊によって行われている。ハメネイ師の後継候補であるモジダバ師の健康問題もこの事態を悪化させていた。重症により長らく意思疎通が困難であったため、防衛隊の独走を止める指導者も不在となっていた。
ある筋の情報によれば、モジダバ師が会話可能な状態に回復し、停戦に向けた動きが模索されている。しかし、意思決定機関には強硬派であるアフマド・ヴァヒーディー革命防衛隊司令官らが含まれており、和平推進派との間で意見が割れ、交渉が前進しては攻撃が再開されるという「イタチごっこ」が続いている。
「神のお告げ」という危うい動員基盤
革命防衛隊が戦火を拡大させる背景には、「神のお告げ」を旗印にする姿勢がある。しかし、この宗教的な大義名分は、イラン国内の多様な民族や国民から支持されているとは言い難い。
民族の分断を招いてる要因としてペルシャ系以外、すなわち国内の過半数近い少数民族にとって、防衛隊の掲げる「神のお告げ」は懐疑の対象となっている現実があり、無宗教国家である中国やロシアとの結びつきは、中東周辺国から「アラーへの冒涜」と見なされており、イランが国際的に孤立する要因の一つとなっている。
核開発を通じた生存戦略と外交障壁の交錯
紛争の火種である核開発問題も、単純な「核兵器開発」という枠組みでは解けない背景がある。
イランは深刻な石油産出量のピークアウトに直面しており、近隣国との油田共有という事情から、長期的なエネルギー源としての「核の平和利用(原子力発電)」を放棄できない事情がある。和平派にとって、平和利用は国家存続のための必要条件だが、ここにも革命防衛隊という巨大な障壁が立ちはだかる。
国際社会は「平和利用は認めても、革命防衛隊が介入してはならない」という条件を突きつけているが、物理的インフラや労働資源を革命防衛隊や民兵組織(バスィージ)が支配している現状において、これを切り離すことは事実上不可能である。
現在のイランは、かつてのフセイン政権崩壊後のイラクにも似た統治機能不全の様相を呈している。和平派と強硬派(革命防衛隊)の分裂は、国際社会が求める和平条件の履行を阻み、解決を困難にしている。
和平派が「神のお告げ」を拠り所とする強硬派を説得し、核開発における軍の関与を排除できるか。あるいは、国民や周辺国からの支持を失いつつある革命防衛隊が、その支配体制を維持できるのか。イランが直面しているのは、単なる軍事紛争を超えた、国家の統治形態そのものを問う深刻な内部崩壊の危機である。
欧州ジャーナリスト連盟(European Federation of Journalists)会員No.JP465 N J269写真家 日本外国特派員協会メンバー会員No.TA1321(社)モナコウィークインターナショナル取材 国際ジャーナリスト 樽谷大助d.tarutani0120@gmail.com取材アシスタントKANAME YAGIHASHI取材アシスタント HINATA TARUTANI 取材アシスタントTATIANA IVANOVNA

