停戦合意は幻想か、イラン・イスラエル情勢、解決を阻む二つの「内部構造」

写真:イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相

イランとイスラエルを巡る緊張状態において、停戦に向けた動きが報じられる中、専門家からは「恒久的な停戦実現への道のりは極めて険しい」との懸念が示されている。表層的な合意合戦の裏側で、停戦を阻む二つの致命的な内部構造が指摘されている。

 軍部独走を許す「統帥権干犯」の構図

イランにおける軍事作戦の鍵を握っているのは、政府やペゼシュキアン大統領、アラグチ外相ではなく、革命防衛隊である。現地の動向を分析すると、かつての日本における「統帥権干犯問題」と酷似した状況が浮かび上がる。

大日本帝国憲法下で軍部が政府のコントロールを離れ、独走するきっかけとなった「統帥権(軍の指揮命令権は天皇に直属する)」という理屈が、現在のイランでも展開されている。実質的な最高決定権を握るハメネイ師の後継とされるモジダバ師を「天皇」のような超越的な存在と位置づけることで、革命防衛隊は政府の介入を「権限の侵害」として拒絶しているのだ。この構造が続く限り、政府がいかに停戦を模索しても、軍部の暴走を止める手立ては存在しない。

ネタニヤフ首相の「政治的生存」と恩赦要請

一方、イスラエル側の動向についても、ネタニヤフ首相の個人的な事情が停戦の大きな障壁となっている。

ネタニヤフ氏は贈収賄や詐欺などの罪で裁判中であり、有罪が確定すれば最大10年の懲役刑が予想されている。戦時下では特例により起訴されないという状況下、首相にとって停戦は即ち「裁判の再開」を意味する。事実、同氏はヘルツォーク大統領に対し正式に恩赦を要請しており、トランプ米大統領からも恩赦を促す書簡が送られるなど、法廷闘争を回避するための政治的駆け引きが激化している。

イスラエルの政治制度において、恩赦権を持つのは儀礼的・象徴的な役割を担う大統領である。首相の刑事責任を巡る恩赦が認められるか否かは、中東情勢という国際政治の行く末をも左右する重要な変数となっている。

ホルムズ海峡の治安改善が期待される一方、イランの軍部による「統帥権」の盾と、イスラエル首相の「自己防衛」という二つの問題は、いずれも構造的な硬直性を孕んでいる。

もしこれらの内部問題が解決されないまま年越しを迎えることになれば、一時的な停戦合意が発表されたとしても、現場では攻撃が継続される可能性は極めて高い。人道的な観点からは事態の沈静化が切に願われるが、現状の地政学的力学を鑑みるに、中東の火種が消える気配は依然として遠い。

欧州ジャーナリスト連盟(European Federation of Journalists)会員No.JP465 N J269写真家 日本外国特派員協会メンバー会員No.TA1321(社)モナコウィークインターナショナル取材 国際ジャーナリスト 樽谷大助d.tarutani0120@gmail.com取材アシスタントKANAME YAGIHASHI取材アシスタント HINATA TARUTANI 取材アシスタントTATIANA IVANOVNA

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